華僑菜とは?
1900年前後に海峡を超えて九州に渡ってきた 主に福建省出身の華僑達が、当地に合わせて独自に考案したりアレンジした料理群のこと。
代表的なものに「ちゃんぽん」「太平燕」「パリパリヤキソバ」「皿うどん」「焼米粉」 「汁米粉」「ハトシ」など。酢排骨や八宝菜、湯魚団(とんにーおん)などもお馴染み度から言うと入れてもいいのかもしれない。
「生きること」は「食べること」。どんなに貧しくても「食」へのこだわりは捨てない華僑の伝統は 材料の「無駄」を嫌い素材を大事にする質素さと 何事も十二分に活用する「創造性」より培われたもの。その伝統に救われるかのように中華料理のビジネスで成功した華僑は少なくない。

華僑菜の原点
九州華僑は殆どの人が長崎から入ってきた。長崎四大唐寺なるものが現存しているのもその名残。その四大唐寺のひとつ宋福寺は福建省出身の菩提寺でもあり今でも毎年夏のお盆(ポールと呼ばれる) には九州各地の華僑達が集まる。家庭によってはそこに数日泊まり込む。その時の炊き出し料理が旨い。特に汁米粉。炊き出しの担当は各過程のおっかさん達。華僑菜の原点は母の味であり、この汁米粉に凝縮されているようにおもう。

熊本名物「太平燕」
太平燕その熊本県人が県外に出て「納す(なおす=片付ける)」と言うと「え?」と言われ、 「掃く(はく=掃わく)」と言うと「え?」と言われる。 そして「太平燕(たいぴーえん)!」と中華料理屋で注文すると「え?」と言われる。
その時に初めて「太平燕は熊本にしかなかったったい」と気付く。
給食にも普通に出るくらい生活に溶け込んだ当たり前の料理。 それが熊本の太平燕であり「どうやら熊本にしかないらしい」と認知されてきたのは最近の話しで「太平燕倶楽部」のサイトや県や市の後押しもありここ数年は太平燕ブーム。
太平燕の本家を自負する当亭としては有り難い限りのお話なのだが、「そもそも太平燕はだれがつくったのか?」「どこが本場なのだ?」「語源は?」などの諸説が論争を呼んでいる。
以下は「太平燕」に関する当亭の見解を独断的に述べさせていただいた。

 
太平燕のルーツ
昔から言われていたのは、「戦時中貧しかったのでフカヒレの代用で春雨を使った」、とか、 「燕の巣のスープを模した」、という説。
もともと大陸 福建省にそういう料理はあったのだが、幻の料理で今はない、と私は聞いていた。
しかし!なんと熊本地局のKKTが福建省ロケを敢行。 現地の市街地にデカデカと「太平燕」と大書された看板を見たときは驚いた。
やはり福建の本場にあったのだ、と思いきや、どうやら熊本の太平燕とは似て非なるもの。
肉だけで皮もつくる「燕皮」という肉団子スープであった。
とても手間がかかる料理らしく 現地の人でも故郷を旅立つ時などにしか食べれないお祝い特別料理であった。
どうやら九州に渡った華僑達が名前だけを拝借したようなのだ。


日本の太平燕を考案したのは一体誰?
紅蘭亭の創業は1934年。半年先に中華園さん。創業当時すでにメニューには乗っていたらしい。
九州華僑の総本山、長崎の崇福寺には毎年夏に「ポール」とよばれる旧盆が催され 九州中の華僑が 集合する時となっている。
家族でおとずれ寺内に寝泊まりする。当然炊き出しも行われる。
そこで出る汁ビーフンが絶品なのだが これが太平燕とよく似ている。
特定の誰かが考案したのではなく華僑菜のひとつとして、いやむしろ華僑菜の源としての 太平燕があるようなのだ。
 御年、80を超える長老にも聞くが 「もうそん頃のじいさん達ぁ死んでしもうて分からんたい」、が真相のようだ。


太平燕はなぜ熊本名物?

そもそも九州全域に太平燕があったことは判明している。
長崎崇福寺を中心とした九州華僑の横のつながりは非常に強かった。
お互い、縁戚関係を結んだものも多い。当然料理も共通していた。現に長崎には今もある。
しかし個食ではなく宴会料理のひとつとして太平燕。 なぜ他県ではほとんど絶滅してしまったのか?
今となっては注目されている太平燕ですが、それよりもずっと以前から、それこそ創業してから 70年の永きに渡り 紅蘭亭では常に人気商品。その太平燕を注文するお客様層は圧倒的に女性であった。 太平燕の素晴らしさを見い出し大事にしてくれた「熊本の女性」達の支持があったからこそ、 メニューから消えることなく熊本名物として定着することができたのだろう。 太平燕の育ての親は「熊本の女性」。この場を借りて厚く御礼申し上げます。



太平燕かくあるべし!

太平燕を守ってきたお店として「かくあるべし」、たるものがあります。
1)春雨は ----緑豆100%であるべし。  よく市中で出回っている春雨はデンプンが 混入されています。
最近売り出されているインスタントやレトルトものは  ほとんどそう。
混入されていると引きが良くなり滑らかになるのですが 本来の春雨とは別モノ。
味の深みがなくなり  何よりもカロリーが高くなってしまいます。  
食べ慣れていけばぶちっと切れていく緑豆の素朴な味深さが分かるようになるでしょう。

2)虎皮蛋(フーヒータン)----揚げ卵のこと。
これは必ず太平燕には入っていなければいけない。あっさりしたスープには絶妙な絡みを見せる。
この卵のために  太平燕はある、というの言い過ぎか。子供たちは幼いころからこのフーヒータンめぐり攻防を繰り広げるのだ。

3)野菜----主たる野菜は、キャベツであるべし。  
タケノコや葱、金針菜なども欠かせないがそこに水気の多い白菜は入れるべきではない。

4)スープ----鳥ガラと豚骨の共出しであるべし。  
コクと味に深みが出る。油で野菜を炒めながらそこに投入されるガラスープが沸騰することによって乳化され  
口あたりがやさしい五臓六腑に沁みる味となるのだ。

5)福建の塩------太平燕で使う調味料はなんと塩だけ。   
当亭は世界でも数少ない露天干しの福建天然塩。発祥の地の精が込められています。